諦められるまで時間がかかった20代の恋

私が20代の頃に好きになった人の事を諦められるようになるまで長い時間がかかりました。
彼は良く言えば話の面白い人でしたが、一方で言い寄ってくる女性がたくさんいるだろうという事が雰囲気でわかりました。
自分でも危険な感じはしたのですが気づいた時には既に遅く、彼の事を意識するようになっていました。
飲食店に勤めている彼に会う為に私は毎週のように彼の店に通いました。
私が店に顔を出した時には私の相手をしてくれますが、もちろん他の女性とも同じように接していました。
そんな時には多少の胸の苦しさを感じる事もあったのですが、彼女も私も彼にとってはお客にすぎないと言い聞かせてました。

食事に行ったり、映画にも行きました。
私は彼と2人で会う時間を楽しみにしていましたが、緊張しすぎて息苦しさも感じる程だったのです。
そんな関係が半年程続いた後、私は思いきって告白しました。
結果は想像していた通りに断られました。
わかっていてもショックだったし、諦めきれる事ができませんでした。
彼にふられた後にもしばらくは彼の店に通っていましたが、会う度に苦しくて不安定になっていったのです。
ちょうど同じ時期に仕事でのストレスも抱えるようになり、私は過食にはしるようになっていきました。
体型が変わる事は嫌なのに食欲をコントロールする事ができないようになっていったのです。
自分でもあまりに惨めで、彼には会わなくなっていきました。
ところが、しばらくして街で偶然彼に再会してしまったのです。
私は自分の姿を見られる事が嫌でうつむいていましたが、彼は以前と変わらない屈託のない笑顔で話しかけてきました。

自分でも愚かだと思うのですが、心配していたよの一言で心が揺れ動いてしまったのです。
それからはまた彼に会いに店に通うようになりましたが、彼は私の体型の変化についてはふれる事がありませんでした。
会う時間を重ねれば好きという気持ちもまた大きくなり、やはり最初の頃のように苦しくなるのです。
自分でもどうして良いかわからずに酔っぱらって泣きながら彼に告白した事もありました。
同僚も私が彼の事を好きだと知っていて心配をかけたはずですが、彼の事を諦めるようにとは言われませんでした。
言っても無駄という思いもあったかもしれませんが、私の気の済むようにという優しさだったのではと今では思います。
他の人に目を向けようにうと合コンに参加したり、告白もされたりしましたが、どうしても彼以外の人を好きになる事ができなかったのです。
彼に会わなければ寂しいし、会ってしまうとそれはそれで辛くなるのです。
今一番良かったと思える事は、その時に私がその土地を離れた事です。
わざと距離をつくって会えない状況を自分で選んだのです。
会いたくなっても会わない方が良いと決断しました。
そしてもう一つは、もう思いつく限りの事をやりつくしたという事です。
辛さや惨めさ、恥ずかしい事もたくさん経験して、やっと諦められるように思えたのです。
その点ではあの辛い時期に黙って支えてくれた友人や同僚にも感謝しています。
今は別の人と結婚して幸せに暮らしていますし、主人の事はもちろん好きです。
でもあんな風に人を好きになった事は初めてで、これからも思い出として忘れる事はないと思います。
きっとまた再会するような事があったとしても、彼はあの時のように声をかけてくるはずです。
もう昔のように心が揺れ動く事はありませんが恥ずかしくないように、これから良い年齢の重ね方をしていきたいと思っています。

すごく苦しかった20代の恋ですが、それでも良い経験になったと今なら思えます。
彼にもどうか元気でいてほしいと遠くから願っています。